おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、子どもを中心に広くみられるウイルス性の感染症です。ムンプスウイルスによって引き起こされ、主に4〜6歳の幼児に多く発症します。春から初夏、そして冬の始まりにかけて流行のピークを迎えることが多く、保育園や学校など集団生活の場で感染が広がりやすい傾向があります。
男女ともに発症しますが、わずかに男児の方が多いとされており、日本では数年おきに流行を繰り返しているのが現状です。耳の下が腫れて痛むという典型的な症状が特徴で、発熱や倦怠感を伴うこともあります。

本記事では、「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」について解説します。予防にはワクチン接種が効果的であり、適切な時期に接種を行うことで発症を防ぎ、重症化のリスクを下げることができます。
目次
おたふく風邪とは?
おたふく風邪は「流行性耳下腺炎」とも呼ばれ、ムンプスウイルスによる感染症です。一度感染すると生涯にわたる免疫を獲得することが多いですが、髄膜炎、難聴などの合併症を引き起こす可能性があり、特に成人での感染は重症化しやすいとされています。
おたふく風邪の原因(感染経路)
おたふく風邪は、ムンプスウイルスというウイルスによって起こります。原因となるこのウイルスは、人の唾液や鼻水などに含まれており、主に「飛沫感染」と「接触感染」で広がります。
飛沫感染は、感染者が咳やくしゃみをした際に、空気中に放出されたウイルスを他の人が吸い込むことで起こります。特に家族や学校など、人が近距離で接する環境では感染しやすくなります。接触感染は、感染者の唾液や鼻水が付着した手や物(食器、コップ、タオルなど)を介してウイルスが口や鼻から体内に入ることで起こります。
ウイルスは体に入ると、喉や鼻の粘膜で増殖し、耳下腺などの唾液腺へと広がります。その結果、耳の下が腫れて痛む典型的な症状が現れます。発症の2〜3日前から発症後約5日間はウイルスを排出しているため、この期間は他人への感染リスクが高くなります。
おたふく風邪の症状
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の症状は、耳の下あたりにある唾液腺(耳下腺)が腫れて痛むことです。多くの場合、片側から腫れが始まり、1〜2日以内に反対側にも広がります。腫れは3〜7日ほど続き、押すと痛みを感じることが特徴です。
発症の初期には、発熱(38〜39℃)、倦怠感、頭痛、食欲の低下、筋肉痛などの全身症状がみられます。耳下腺が腫れる前にこれらの症状が先行することもあります。痛みのために食事や会話がしづらくなり、特に酸味のある食べ物を口にすると強い痛みを感じる人もいます。まれに耳下腺以外の唾液腺(顎下腺や舌下腺)が腫れることもあり、顔全体がふっくらとした印象になる場合もあります。
症状は1〜2週間程度で自然に回復することが多いですが、強い痛みや発熱がある場合は医療機関での診察が大切です。
おたふく風邪の合併症
おたふく風邪の合併症の中でも、特に注意が必要なのが「髄膜炎(ずいまくえん)」です。髄膜炎は、脳や脊髄を包んでいる「髄膜」という膜に炎症が起こる病気で、ムンプスウイルスが血流を介して中枢神経系に侵入することで発症します。
おたふく風邪による髄膜炎は、主に子どもに多く見られ、発症時期は耳下腺の腫れが出る前後、または回復期に現れることもあります。特徴的な症状としては、発熱、強い頭痛、吐き気、嘔吐、首のこわばり(項部硬直)、光をまぶしく感じるなどがあります。一般的にムンプスウイルスによる髄膜炎は「無菌性髄膜炎」と呼ばれ、細菌性のものに比べると重症化することは少ないとされていますが、頭痛や発熱が長く続く場合もあります。
おたふく風邪の治療
おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスに直接作用する特効薬は存在しません。そのため、治療は症状をやわらげ、体が自然に回復するのを助ける「対症療法」が中心となります。
耳の下の腫れや痛みが強い場合は、冷たいタオルや保冷剤をハンカチなどで包み、軽く冷やすと楽になります。熱が高いときや全身のだるさが強いときは、十分な休養と水分補給が欠かせません。発熱や痛みが続く場合には、医師の判断で解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)が処方されることもあります。
おたふく風邪の登校基準
おたふく風邪は感染力が強いため、学校や保育園などでは登校・登園の基準が定められています。日本では「学校保健安全法」により、学校感染症の一つとして指定されており、一定期間は出席を停止する必要があります。
登校(登園)の目安は、「耳下腺、顎下腺、または舌下腺の腫れが出てから少なくとも5日が経過し、かつ全身の状態が良好であること」とされています。つまり、腫れが始まってから5日以上経ち、発熱や強い痛みなどの症状が落ち着けば登校できるという基準です。ただし、症状の回復には個人差があり、熱が下がっていても腫れや倦怠感が残っている場合は、もう少し自宅で安静にするのが望ましいとされています。
おたふく風邪の予防接種
おたふく風邪の予防には、ムンプスワクチンの接種が有効です。ムンプスウイルスへの感染を防ぐ、または感染しても重症化を防ぐ効果があり、合併症のリスクを大幅に下げることが確認されています。
ワクチンを1回接種した場合の発症予防効果は約80%前後とされており、2回接種では90%以上に高まります。特に日本小児科学会では、1歳になったら1回目、5〜6歳ごろに2回目の接種を推奨しています。1回だけでは時間の経過とともに免疫が弱まるため、2回目の接種によって免疫をしっかりと定着させることができます。ワクチンを接種していても、ごくまれに感染することはありますが、その場合でも症状は軽く、耳下腺の腫れや発熱が軽度で済む傾向があります。
日本ではおたふくかぜワクチンは任意接種のため、自治体によっては自己負担になりますが、費用補助を行っている地域もあります。
赤羽でおたふく風邪の予防接種なら赤羽内科クリニック
赤羽駅から徒歩1分の赤羽内科クリニックでは、おたふく風邪の予防接種に関する診療を行っております。ワクチン接種によっておたふく風邪の発症を防ぐだけでなく、感染した場合にも症状を軽く抑える効果が期待できます。今までかかったことがない、またはワクチン接種をしていない場合は、ムンプスワクチンの接種をお勧めします。
医院概要
医院名:赤羽内科クリニック
診療科目:一般内科、循環器内科
院長:高木 昌浩
住所:東京都北区赤羽西1丁目15-14 エル・ルージュ赤羽西2F
電話番号:03-5948-5945
ウェブサイト:https://akabanenaika.com/