5人に1人が糖尿病または予備軍
日本では今や、糖尿病は誰にとっても身近な生活習慣病のひとつとなっています。厚生労働省の調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は約1,000万人、「その可能性を否定できない人」を含めると約2,000万人にのぼると推定されています。これは成人のおよそ5人に1人が糖尿病、または予備軍である計算になり、まさに国民病ともいえる状況です。特に男性では約2割、女性でも1割以上が糖尿病を強く疑われる状態と報告されています。
糖尿病は自覚症状が出にくいまま進行し、気づいた時には合併症が現れるケースも少なくありません。生活習慣や加齢に伴い発症リスクが高まることから、日々の食事・運動習慣や定期的な健診による早期発見が重要です。
本記事では、「糖尿病」について解説します。糖尿病は放置すると血管が傷つき、腎不全や心臓病、脳卒中などの合併症を引き起こす可能性があるため、血糖値を管理することが大切です。
糖尿病とは?
糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。健康な人であれば、食事で摂った糖はすぐにエネルギーとして使われますが、糖尿病では血糖をうまく利用できず、高血糖の状態が続いてしまいます。
糖尿病の種類
糖尿病には、1型糖尿病や2型糖尿病、妊娠糖尿病などがあり、日本では2型糖尿病が圧倒的に多いとされています。
1型糖尿病
1型糖尿病は、自己免疫学的機序が原因で、膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が壊され、インスリンが出なくなることで高血糖状態となる病気です。一般的に、幼児から15歳以下の小児期に発症することが多いです。
2型糖尿病
2型糖尿病は、遺伝や肥満、ストレス、運動不足などの生活習慣の乱れが原因で発症する病気です。インスリン分泌障害やインスリン抵抗性によって血糖値が高くなり、この状態が慢性化します。40歳以上の中高年に多いですが、近年は若い世代でも増えています。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常です。母体や胎児に影響があるため、早期の管理が重要です。血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きは、妊娠が進むにつれて弱まるといわれています。もともとインスリンの働きが弱めの方が妊娠すると、妊娠の後半に血糖値が上昇し、妊娠糖尿病を発症することがあります。なお、妊婦の7〜9%が妊娠糖尿病と診断されています。
糖尿病の原因
糖尿病の原因は主に「インスリンの分泌不足」と「インスリンの作用不足(インスリン抵抗性)」があります。これらは、遺伝、加齢、肥満、運動不足、食生活の乱れ(過食・高脂肪食)、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどの生活習慣が複雑に絡み合って発症します。特に日本の糖尿病患者の多くは、生活習慣と遺伝が関係する2型糖尿病です。
インスリン分泌低下
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンですが、この分泌能力が弱まると必要な量が足りなくなり、血液中の糖を細胞に取り込むことができなくなります。その結果、血糖値が高い状態が続いてしまいます。
インスリンの作用不足
インスリンが十分に分泌されていても、体の細胞がうまく反応せず、糖を取り込めなくなる状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。特に肥満や運動不足は抵抗性を強める要因となり、血糖コントロールを難しくしてしまいます。
糖尿病の症状
糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断で指摘されて初めて気づく人も少なくありません。しかし、血糖値の高い状態が続くと、体にはさまざまな変化が現れます。糖尿病の代表的な症状として、強い喉の渇きや尿の回数が増えるといった症状があります。体内の糖を排出しようとして水分が必要になるためで、結果的に水分を多く摂っても尿の量が増えてしまいます。
また、糖をエネルギーとしてうまく利用できないことから、食欲があっても体重が減っていく場合があります。さらに、エネルギー不足によって全身が疲れやすくなり、慢性的なだるさを感じる人も少なくありません。加えて、血糖値の変動によって視界がかすんだり、目のピントが合いにくくなることもあります。傷の治りが遅くなったり感染症にかかりやすくなるのも糖尿病の特徴で、こうした症状が出ている時点で病気はすでに進行している可能性が高いといえます。
糖尿病の合併症リスク
糖尿病の怖さは、血糖値が高い状態そのものよりも、長く続くことで起こる合併症にあります。
糖尿病三大合併症とは?
高血糖が血管や神経にダメージを与えることで、全身にさまざまな障害を引き起こします。糖尿病の合併症として代表的なのが「糖尿病三大合併症」と呼ばれる網膜症・腎症・神経障害です。糖尿病網膜症は視力の低下や失明の原因となり、糖尿病腎症は透析が必要になるほど腎臓の働きを奪うことがあります。神経障害は手足のしびれや痛みを引き起こし、進行すると感覚が鈍くなり、足の潰瘍や壊疽につながることもあります。
その他の合併症
糖尿病は血管の老化を早める「動脈硬化」を進めやすいことが知られています。そのため、心臓や脳といった生命に直結する臓器に重大な影響を及ぼすリスクが高まります。代表的なのが、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患と、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害です。いずれも突然発症し、命を脅かすだけでなく、重い後遺症を残すことも少なくありません。また、足の血流が悪くなることで「閉塞性動脈硬化症」を引き起こし、歩行時の痛みや壊疽につながるケースもあります。
糖尿病の検査・診断
糖尿病の検査では、空腹時血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)が重要な指標になります。空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上であれば、糖尿病の可能性が強く疑われます。さらに、食後2時間の血糖値を測定するブドウ糖負荷試験も診断の一助となります。いずれも血糖値が高い状態が複数回確認された場合に、糖尿病と診断されるのが一般的です。
また、最近では持続的に血糖を測定する検査(CGM)を用いて、日常生活での血糖変動を詳しく把握するケースも増えています。大切なのは一度の結果だけで判断するのではなく、繰り返し検査を行い、総合的に評価することです。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、血糖値を安定させて合併症を防ぐことを目的としています。大きな柱となるのは、生活習慣の改善と薬による治療です。特に2型糖尿病では、生活の見直しが治療効果に直結するため、患者さん自身が日常生活で取り組むことが重要になります。
食事療法
食事療法は糖尿病治療の基本です。エネルギー摂取量を適切に保ち、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)のバランスを整えることが求められます。糖質や脂質を控える一方で、野菜や食物繊維をしっかり摂ることが血糖コントロールに役立ちます。また、食事の量やタイミングを整えることも大切で、間食や夜遅い食事を避けることが推奨されます。
運動療法
運動は、血糖を下げるだけでなく、インスリンの効きを改善する効果もあります。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続することで血糖値が安定しやすくなり、筋肉量を増やすことで基礎代謝も高まります。無理のない範囲で日常生活に取り入れることが大切で、エレベーターではなく階段を使うといった小さな工夫も効果的です。
薬物療法
薬には大きく分けて、飲み薬である「経口血糖降下薬」と、注射によって使う「インスリン製剤」があります。患者さんの状態や血糖値のコントロール状況によって、単独または組み合わせて用いられます。
経口血糖降下薬
経口血糖降下薬にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる働きを持っています。膵臓を刺激してインスリン分泌を助ける薬(スルホニル尿素薬やグリニド薬)、筋肉や脂肪でのインスリンの効きを改善する薬(ビグアナイド薬やチアゾリジン薬)、食後の急激な血糖上昇を抑える薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)、腎臓から糖を尿として排出する薬(SGLT2阻害薬)などがあります。また、インクレチンというホルモンの働きを利用してインスリン分泌を調整するDPP-4阻害薬も広く使われています。これらは単独で用いることもあれば、組み合わせて効果を高めることもあります。
インスリン製剤
インスリン製剤は、膵臓からのインスリン分泌が不足している場合や、飲み薬で十分な効果が得られない場合に使用されます。注射によって体内に直接インスリンを補うことで、血糖をコントロールします。作用の速さや持続時間の違いによって、超速効型、速効型、中間型、持効型などの種類があり、食事に合わせて使うものや、日中の血糖値を安定させるものがあります。最近ではインスリン注射器やペン型注入器、持続的にインスリンを注入するポンプなども普及しており、患者さんが日常生活に取り入れやすい工夫が進んでいます。
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医院概要
医院名:赤羽内科クリニック
診療科目:一般内科、循環器内科
院長:高木 昌浩
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